金銅弥勒菩薩半跏思惟像 白鳳時代
¥ 2,800,000 税込
商品コード: nb085
【白鳳時代の金銅弥勒菩薩半跏思惟像】の名品です。
高く大形の榻座(とうざ)の上に座る弥勒菩薩像です。
右手の中指と人差し指を眼下の頬辺りに当てて、半跏思惟の姿をとる像容です。
この独特な思惟相は、この菩薩が釈迦の入滅から56憶7千万年後にこの世に顕現して、衆生を如何に救済するかを思惟(深い思考)されているお姿と云われています。
頭上に大きめの宝冠(三面頭飾)をつけ、童顔のような丸顔には、仏像には珍しい二重瞼の両眼が刻まれています。
正面頭飾は花弁と芯部を陽刻にした大(八弁)と小(七弁)の花文を上下に置き、その外周にはわらび文のような旋頭文(せんとうもん)を瓢形に配し、最上部には三日月形が二重になったものを付しています。
両側面の頭飾は、同じく花弁と芯部を陽刻にした正面下部のものとほぼ同じ大きさの花文を中心に、正面に付されているものより長脚の旋頭文を取りまとめてひとつの意匠としています。
頭部の髻(もとどり)は大きめの単髻(たんけい)で、真中に分割線が施されています。
宝冠下の髪際(はっさい)は複数の半円を連ねた形で表現さています。
お顔は顎が細く凛々しく古式微笑(アルカイック・スマイル)を湛え、慈悲心にとても満ちた優しいお顔をされています。
鎬(しのぎ)の立った鼻梁線や、小さめの鼻翼のふくらみ、富士山形をなす上唇の線などの面相は、白鳳彫刻に共通してみられるこの時代の特色を色濃く残しています。
白鳳時代の半跏思惟像は童子の顔に造られる小金銅仏の作例が少なからずあります。
この作品は童顔を残しながらも、青年期への顔貌に変化しつつある、白鳳時代後期の特徴を示していると申せましょう。
首には二筋の皺を横に入れた三道(さんどう)がございます。
垂髪は両耳の後ろを通り、二ヵ所蕨手(わらび手)を作りながら、両肩に掛かっています。
垂髪は毛髪の流れをうねるように表現して量感を出しています。
胸元には瓔珞(ようらく)が二重のUの字を描いています。
胸飾りの瓔珞(ようらく)には、魚々子鏨(ななこたがね)を深く打ち込んで球体の連鎖(連点文)を表現して秀逸です。
殆ど裸の上半身に較べて、下半身はまことに賑やかな装飾が施されています。
両腕は長く、合わせて胴も長く、そのうえ細く造られています。
背面を見てみますと背筋を浅い溝彫りで表しています。
柔軟な肉付けをした体軀や腰紐の襞などには自然なものが見受けられます。
思惟手である右手や、右脚の上に載せた左手の繊細な指先は、精緻な造りで優雅な雰囲気を醸し出しています。
屈臂した右肘を載せた右脚は半跏し、左足は踏み下げています。
半跏像の場合、踏み下げた左足をのせる蓮華座(踏蓮華座)を設けるのが一般的ですが、本像ではそれを取り付けた痕跡が全く見られません。
蓮華座は反花(かえりばな)で、複弁の子葉を扁平に表しています。
本像の特色は鏨(たがね)による各部の文様の表現にあります。
衣部のヘリや襞(ひだ)の峰、蓮弁の縁、そして上框(うわかまち)の縁までに精緻な連点文と線文が見られます。
裳の縁には二重の同心円の周囲に、さらに小さな円文を連打した半截裁九曜文(連珠文)が施されています。
この像で特に注目されるのは、台座の下部と蓮弁の上側の間に、古式な山岳図が線刻されていることです。
この重畳する山々は弥勒の住むと云う兜率天下山(須弥山)を表していると思われます。
山に立つ樹木は「丸」に「縦線」で表現されています。
後頭部には凝った造りの光背が残ります。
この透かしを多用した光背は印象が重くならず、この細身の像容にとてもよく調和し絶妙の取り合わせと申せましょう。
本体台座共一鋳で、台座(榻座)のみ中空です。
像身はむくで銅も全体に厚く非常に重いです(約8㎏)。
「す」がほとんどないのも、この時代の鋳造技術が飛鳥時代に較べ格段の進歩を示していることを物語っています。
誠に仕上げが入念で、まとまりの良い像容を示しており、白鳳時代も名品と云えるのではないでょうか。
像全面には鍍金がよく残っており、全体的に状態は良いです。
★本像は【法隆寺献納宝物金銅仏第159号】と像容が酷似しています。
また光背はやはり【法隆寺献納宝物附属光背第195-23号】と瓜二つです。
この献納仏と兄弟のような白鳳仏の名品が、幾星霜の流転を経て、如何にして幸運にも残ったかは、今となっては推測するほかございません。
名品の香りが致します。
正に一期一会のお品ではないでしょうか。
このお品は、某芸術大学教授の収集品でありましたが、ご親族のご依頼により、出品させて頂いております。
作品サイズ・総高(光背共)38.3㎝・(光背なし)32.5㎝ 台座直径14㎝ 重量(光背共)約9.054㎏・(光背なし)8.077kg 箱あり