金銅弥勒菩薩半跏思惟像 白鳳時代
¥ 2,500,000 税込
商品コード: nb074
高い円形の榻座(とうざ)に腰掛け、右手の指先を眼下辺りまで上げ、半跏思惟の姿をとる像容です。
釈迦の入滅から56憶7千万年後にこの世に顕現して、衆生を如何に救済するかを思惟(深い思考)されているお姿です。
頭上に豪華な三面頭飾の宝冠を載せています。
正面頭飾は花弁と芯部を陽刻にした大(八弁)と小(六弁)の花文を上下に置き、その外周にはわらび文のような旋頭文(せんとうもん)を瓢形に配し、最上部には三日月形が二重になったものを付しています。
両側面の頭飾は、同じく花弁と芯部を陽刻にした正面下部のものとほぼ同じ大きさの花文を中心に、正面に付されているものより長脚の旋頭文を取りまとめてひとつの意匠としています。
頭部の髻(もとどり)は大きめの単髻(たんけい)でこれも繊細な毛筋彫りが施されています。
髪際(はっさい)は複数の半円を連ねた形で表現され、いずれも同心円状の精緻な毛筋彫りが施されています。
お顔は顎が細く凛々しい雰囲気があり、いわゆる古式微笑(アルカイック・スマイル)の慈悲心に満ちた優しいお顔をされています。
白鳳彫刻に共通してみられる鎬(しのぎ)の立った鼻梁線や、小さめの鼻翼のふくらみ、富士山形をなす上唇の線など、面相部分に見られるその時代の特色を色濃く残しています。
白鳳時代の半跏思惟像は童子の顔に造られる小金銅仏の作例が少なからずあります。
この作品は童顔を残しながらも、青年期への顔貌に変化しつつある、白鳳時代後期の特徴を示していると申せましょう。
首には二筋の皺を横に入れた三道(さんどう)がございます。
垂髪は両耳の後ろを通り、二ヵ所蕨手(わらび手)を作りながら、両肩に掛かっています。
垂髪は繊細な毛筋彫りが施され、また毛髪の流れをうねるように表現して量感を出しています。
胸元には瓔珞(ようらく)が二重のUの字を描いています。
瓔珞(ようらく)には魚々子鏨(ななこたがね)を深く打ち込んで球体の連鎖(蓮点文)を表現して秀逸です。
両腕は長く、合わせて胴も長く、そのうえ細く造られています。
背面を見てみますと背筋を浅い溝彫りで表しています。
柔軟な肉付けをした体躯や腰紐の襞などには自然なものが見受けられます。
思惟手である右手や、右脚の上に載せた左手の繊細な指先は、精緻な造りで優雅な雰囲気を醸し出しています。
屈臂した右肘を載せた右脚は半跏し、左足は踏み下げています。
半跏像の場合、踏み下げた左足をのせる蓮華座(踏蓮華座)を設けるのが一般的ですが、本像ではそれを取り付けた痕跡が全く見られません。
蓮華座は反花(かえりばな)で、複弁の子葉を扁平に表しています。
尚、榻座背面に「元中元年」、框座背面に「一心寺納」と鏨(たがね)による銘記がございます。
元中は日本の南北朝時代の南朝で使用された元号で、元年は(西暦1384年)にあたります。
一心寺は現在、大阪や大分に同名の寺院が存在しますが同寺かは不明です。
白鳳時代に造像された仏像が、永らく祀られていた末寺の寺勢が、何らかの理由で衰えて本寺(本山)に移管されたものか、または個人の念持仏であったものが一心寺に奉納されたのではないでしょうか。
今となっては推測するほかありませんが、白鳳仏の名品が幾星霜の流転を経て幸運にも現在に残ったということでしょう。
像全面には鍍金がよく残っており、全体的に状態は良いです。
銅も全体に厚く重いです(5.9㎏)。
★本像は法隆寺献納宝物第159号と像容が酷似しています。
名品の香りが致します。
正に一期一会のお品ではないでしょうか。
作品サイズ・高さ32.5㎝ 台座直径14.2㎝ 重量 約5.9㎏ 箱あり